2014年9月24日水曜日

初日

21/9/2014

私は何故彼の車に乗っているのだろう。
語学学校を斡旋した会社など全てグルで私は高いお金を払って奴隷になりに来たのだ。
愚か者なのだ、世の中のことを何も知らない愚か者だったのだ。

そう思った時だった。
見覚えのある集落が見える。
私は恐る恐る、彼にあれはファベーラかと尋ねた。
そうさ、と返事が返ってきた。
やはり私はこれから貧困街に売られて過ごすのかと思っていたら彼は言う。
これから先はもっと巨大なファベーラがあるというのだ。

そこにそれはあった。
私はこんなに美しい光景を見た事がなかった。
33時間の悪夢の疲れなど忘れていた。
シャッターをきってはみるが何せ彼が100kmほどで車を飛ばしているので
その感動は写ることはなかった。

彼に「ふぁ、ふぁべーら、くいだーど?(ファベーラはきけんですか?)」
と聞くと鼻で笑いながらそんなことないよ、と応えた。
確かに人もたくさん歩いているし子供達も信じられない巧さでボールを蹴っている。
美しさに見とれているうちに彼は私を空港からホームステイ先までの25kmを15分で運び出した。
そこはファベーラではなく、警備員付きの高層ビルだった。
ステイ先のTakeya,Marlene夫妻の人相の良さに心が落ち着いた。
永い、永い夢が醒めたのだ。


早速Takeya氏がBarraのビーチを案内してくれるという。
日曜日という事もあってビーチの近くは黒人で溢れている。
すれ違うどの黒人にも喧嘩で勝てる気がしない。
ぶつかりそうになれば私は全力で道を譲る。

Takeya氏は日系人で少しだけ日本語が話せる。
60過ぎの優しいおじさんだ。
歩くスピードや話すテンポが私と合う。
恐る恐るファベーラやこの辺はどのくらい危険なのか尋ねてみたところ、
全然昼間は大丈夫だと言う。
よく見ると陸軍のような服を着た警察があちこちに配置されている。
延々と美しいビーチを歩く。
が夜はビーチは大変危険な地域らしいので行かないようにと教えを乞う。






昼食。バイキング式のようなレストランなのだがシステムがよくわからない。
一皿7レアル、と書いてあるが最後にグラムを計って最終的に決定した値段を支払う。
というかTakeyaさんが奢ってくれた。お肉と豆はやはり美味かった。

帰りにスーパーマーケットによる。
そこで私は驚愕の事実を突きつけられる。
酒が高いのだ。これは致命的だ。安いビールでも200mlで100円ほど。
ドイツ産のビールなど200ml/19レアル(900円)する。
ワイン、ウィスキーなど全て高い。
よく店内を眺めてみると日本より若干物価が高い気がする。
厳密にいうと生活品はそんなに変わらないのだが
私の場合は日本の口座からカードで支払うのでレートより高くなるのだ。
厳密にまだ計算していないが塵も積もればなんとやら。
しかし酒は確実に日本より高い。
私が一日にどれだけ酒を呑むと思っているのだ。
これはいかん、散財の予感、滞在期間に響いてくる。
計画を練り直さねばならないかもしれない。
(この時点ではまだ一カ所でしか買い物してません)

夕方にMarleneさんがブラジル料理を作ってくれる。
まだ料理の名前を覚えてないが10品くらい出してくれて全て美味だった。
胃が満たされると飛行の疲れが押し寄せてきて部屋に戻る。
もう陽は落ちている。

うつらうつらとしていると遠く街の方からとんでもない爆発音がする。
初日にしてとんでもなく恐い。泣きそうだ。
と思っていたらTakeyaさんが外へ出かけよう、などととんでもない事をぬかす。
こっちの方は大丈夫、と言ったのが銃声とは逆方向だったので
なんとかTakeyaさんにくっついて行く。
私を連れ出したのは今日はゲイのお祭りが行われていて、ライブなどがあるらしい。

公園にステージが組んであってDJがいて若い黒人が狂喜乱舞している。
ビールやマリファナを持った平均身長180cmくらいの黒人たちが踊り狂っている。
恐い。早く帰りたい。

バンドが出て来て演奏が始まった。
もの凄い音のデカさ。まずPAが凄い。
絶えず卓でハウリングギリギリの音をコントロールしている。
そして演奏が凄まじい。音符の造りは普通のアフロファンクなのだが、
グルーヴが半端ではない。
日本人には絶対演奏出来ないと個人的な見解。

Takeyaさんが前の方へ私を連れて行く。
いや、私は音楽には感動したが、ゲイ達が踊り狂っている最中に飛び込みたくない。
Takeyaさんは狂乱の中、踊りもせず棒立ちで黒人達にもひれ伏さない。
演奏が盛り上がって客達はカポエイラをし始めた。
カッコいい。知らぬ人同士が入れ替わり立ち代わりでカポエイラを踊る。
この客文化は日本で流行るかもしれない。

しかし恐い。横でゲイや200kg程の女性やらがキスしながら踊っている。
ホームレスのような人やビール売りの人まで全て恐い。
やがて恐怖によって音楽にすら集中できず、私は黒人に完敗した。

演奏が終わりようやく帰路につく。
帰路の途中、どうだったかと聴かれて音の感動を伝える。
するとTakeyaさんは「私はああいう音楽が嫌いなんだよね」と言い放った。
好きでもない狂喜乱舞の黒人達の中、
最前列で仁王立ち出来る日本人は他にいないだろう。
きっと私の為に連れ出してくれたであろう事に感謝しながら眠りについた。
永い一日が終わった。

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