20.9.2014
羽田空港。
日本人も多い。
まだ不安はない。
よもやこれから33時間も移動する事になるとは知らずに。
フランクフルトを経由するために羽田から11時間ほどの飛行。
開始1時間ほどで軽食を差し出される。
ちなみに羽田で友人と美味しくない串カツを腹に入れたばかりだ。
胃が気持ち悪くなった時、私はすぐに眠りに落ちる、、
しかし2時間程で目が醒める。
私は安部公房著『砂の女』を読み始める。
小説とはこういうものか、そう思いながら夢に堕ちてゆく。
私は夢が小説なのか、小説が夢なのか判らなくなっていた、、
何時間が経過したのだろうか。
まだ空を飛んでいる。
定期的に差し出される白ワインのみが私の退屈を紛らわせてくれた。
『ビーフorチキン?』という声が遠くから聴こえる。
この飛行船に乗っている全員がビーフと答えると、
果たしてビーフの在庫はあるのだろうか、
はたまたその際には余ったチキンの運命はどうなるのだろうか、
などと思考を凝らしてしまう。
志ある私は『チキン』と応えた。
また眠気が襲ってくる、、
未だ私は閉じ込められている。一体どういうことであろうか。
実はこの船は飛んでいないのではないか、などと疑問を抱いてしまう。
そろそろ20時間は経つはずだ。
そもそもずっと座っている人間がそうそう簡単に腹が空くものか。
私はここで飼い殺されるに違いない。
乗っている人も皆騙されているのだ。
今こそ救世主とばかりに我叫ばん、そう思った矢先に
「まもなく着陸態勢に入ります」というアナウンスが流れた。
フランクフルト空港に降り立つ。
ドイツ降り立ってすぐの喫煙所はCAMEL。日本の喫煙所はメビウス。
なぜ日本はCAMELを売らない。
だからマイルドセブンをメビウスなどと命名するほどに感性が鈍ってしまうのだ。
CAMELの広告、洗練されたデザインの空港、ヨーロッパ人に囲まれた私。
感涙を受けた。
なぜなら空港で搭乗口を尋ねるものの出会う人間全てが何を言ってるのかわからない。
私はパンクロック時代に培った得意のステージングで2m程のドイツ人に案内させる事に成功した。
フランクフルトからサンパウロまでまた11時間ほど要するらしい。
やはり私は悪い夢を見ているらしい。
わざわざ高い金を払ってなんでまたこんな思いをせねばならんのだ。
しかし乗りかかった船というものは引き返せない。
仲間に包まれては酒を浴びるように呑んでいた日本に帰りたいと何度も思った。
しかし帰るにはまた悪夢を二度見なければならない。
私は六道輪廻に堕ちていた、、
サンパウロに降り立つ。
治安の悪い国など温々と生まれ育った私には未体験ゾーン。
ここが重要だ。
しかし入国審査では褐色の女性から満面の笑みで「ウェルカム!」と言われた瞬間に
輪廻廻って天国に堕ちてきたものかと思った。
すっかり調子に乗った私は空港内を散策しよう、ここにはどんな高貴な喫煙所があるのかしらん、と思ったところ散策する程国内線は広くなかった。
行ける所は全て歩いたが喫煙所が見当たらない。それに空港がなんだか汚い。
そもそも私は11時間も煙草を吸っていない。
喫煙者を舐めないでいただきたい。
なんだか私が夢見たブラジルとはほど遠い。
私は何をしに来たのかわからなくなった。
一服も許されずサルヴァドールに向けて乗り継ぐ。
最後は2,3時間も我慢すれば目的地だ。
私がどんな地獄をくぐって来たのかブラジルという国は知らないのだろう。
とはいえドリンクサービスのカゴに酒が見当たらない。
座禅の中、私に酒抜きでどう悟りを開けというのか。
永い飛行によって私は全く睡眠を欲していない。
私は全てを後悔し始めていた、、
世の中には時差というものが存在する。
私はエアチケットの時間だけを確認していた。
知人に「やっぱり飛行機って時代の進化とともにどんどん速くなってるんですね。」
などと言い散らかしていた自分をぶん殴ってやりたい。
悟りを開けず全ての私欲に精神が溢れていたがなんとかサルバドールに降り立つ。
到着口に待っていたのは語学学校の黒人である。
私はこれほどまでに漆黒の人を知人に持った事がない。
日本語は通じない。
彼の車に乗せられてから私は何処かに身を売られるのではないか、そう思い始めていた。
彼は5車線ほどの国道を車線を無視しながら信じられない速度で縦横無尽に走り始めた。
私の悪夢は終わりを見せない。
気付いた時には日付は変わっていた。

0 件のコメント:
コメントを投稿